新築編4 別荘の非日常が日常になる。
暮らしを五感で味わう定住型里山山荘

「NICHIHA SIDING AWARD 2014」グランプリ~ 鹿児島県 K様邸

「NICHIHA SIDING AWARD 2014」グランプリ~ 鹿児島県 K様邸

市の中心部から車で20分ほどの緑豊かな鹿児島市郊外。K様が自邸に探し出した土地は、建物の西側に広がる杉や檜の山林が340m²、宅地が540m²という広々とした三角形の敷地。 建物を囲むように緑が溢れ、雑木林の自然の中の別荘のイメージを醸し出している。南側の大開口からは雄大な桜島と錦江湾の海、丘陵の景色を毎日望むことができる。

「NICHIHA SIDING AWARD 2014」グランプリ~ 鹿児島県 K様邸

キャスティングウッド ナチュラルオーカーMG

家づくりの原点となった思い出

「なぜ、ずっとそこに住んじゃいけないのかな・・・」。
今回のグランプリ作品は、学生時代や社会人になって過ごした別荘での経験が、家づくりの原点になっている。
「特に、当時の上司が友人と建てた別荘に宿泊した経験が強く印象に残っています。それは吉村順三先生の「軽井沢の山荘」に似ていて、2階のリビングの窓からは木の上だけしか見えない。 まさに鳥の視線で樹木の間を浮遊する感覚になりました。暖炉もあって、そこの前で昼寝をしたら、すごく気持ちが良かった」。お話しくださるのは、作品の設計者であり、お施主様でもあるK様。
冒頭の疑問は、限られた期間しか利用されない別荘に対する思い。そこで自宅を設計するにあたり「別荘のように居心地のいい、自然と一体になった空間をつくり、毎日暮らしたい」と考え、今までの経験や思いのたけを注ぎこんだ。
「土地を探す時には、生活もあるので、別荘のような自然環境と、子どもの学校までの距離の両方を兼ね備える場所を選びました。建物に求めたのは、極力自然の力を利用してなるべくCO2を出さないよう、パッシブデザインを盛り込むことでした」。

パッシブデザインとバリアフリー

この家は再生可能エネルギーとして太陽光発電を、パッシブデザインとして、冬季に太陽からの日射を直接窓から室内に取り込んで、床や壁などに蓄熱させ、輻射熱で室内を暖めるダイレクトゲインを取りいれている。 そのためコンクリート床への蓄熱効果を期待した逆べた基礎を試みた。薪ストーブで温めたお湯は、床暖房に利用。夏場の日射は、深い軒とパーゴラが遮蔽する。「もともとイメージ的には難波和彦先生の「箱の家(※)」があった」とおっしゃるK様。 難波和彦氏の代表作「箱の家」シリーズの基本思想、サステイナブル・デザインに影響を受け、参考にしたという。
「箱の家は設計レベルが高く、細部の設計まで綿密なので、とても真似できるものではありません。間取りをシンプルに、一室空間に近い内部構成とし、外部に開いている点は、意識しています。 難波先生の家は都市型ですが、僕の家は別荘タイプ。別荘タイプにするにあたり、南面だけでなく、北面にも大開口を設けることで、通風はもちろん、庭を両方から取り込めるので、 2階のスタディコーナーは森の中の橋を渡っているようなイメージになるように、自分なりに工夫しました」。
※箱の家…都市住宅としての最低限の性能を最小限の物質によって達成することを目指し、シリーズを重ねた延長上に展開する最大のテーマは、サステイナブル(持続可能性)化である。

平面図

外観写真
グリーンカーテンが夏の日射しを優しく遮る

2階
2階 スタディーコーナーから望む雄大な桜島

一方、バリアフリーへの取り組みにも力を注いだ。「リウマチの母は、手足が不自由なので、将来車いすになっても大丈夫なようにしました。 バリアフリーといっても玄関に段差があるのが普通ですが、僕の家は外から中まで段差なしで行けるように、上がり框もありません。玄関だけでなく、掃き出し窓からでも行き来しやすいように、床高を350mmに抑えています。 実際に目に見える段差を解消するだけでなく、暮らし方においての外と内のバリアフリーにも繋がっているかなと。 以前訪れたニュージーランドでは、家に段差がなく、コンクリートの床にカーペットが敷いてあり、裸足で芝庭と行き来していました。そんな感じがいいなと」。

自然に溶け込む内外装

外装写真

外壁に選定したのは、モエンエクセラード16 キャスティングウッド ナチュラルオーカーMG。 キャスティングウッドを選んだ理由をお伺いすると「僕が家を建てる時にちょうど明るい色の新色が出たんですよ。当初は焦げ茶にしようと思っていましたが、焦げ茶なら本物の木を使ってもそこそこもつ。 だけど、こういう明るい色は、本物の木だとグレーになったり、メンテナンスも大変。特に鹿児島は藻がはえたり、火山灰が降ったり、外壁にとって過酷な環境にあります。 サイディングだからこそ、この色が使えると思ったんです。真壁の室内の天井や床も全て自然素材。パーゴラも本物の木ですが、その室内から外壁を見ても、木の質感がある程度連続しているように見えて。 室内の雰囲気と遜色ないほどの外観の仕上がりは、想像を超えていました」

LDK
開放感あるLDK。自然と家族が集まるくつろぎの場所

サイディング
キャスティングウッドのリアルな質感が自然に溶け込む

「別荘に住む」という提案

少子高齢化が進む地方では、病院があるなどの利便性において都心回帰が著しい。そのため、郊外はこれからゴーストタウン化していくと思われる。 「大都市では難しいかもしれませんが、人口が減って土地の価格が下がった郊外だからできる暮らしがある。ある程度便利な環境を保ちながら、緑溢れる里山的な環境をも手に入れる。 「別荘に住む」という暮らし方を提案するプロトタイプになればと考えています」。
家の中で一番好きなところは、リビングの吹きぬけとおっしゃるK様。リビングの暖炉の前で昼寝をするのが至福の時間。引っ越して困ったことは、家に仕事を持ち帰ってもできなくなったこと。 2階吹きぬけのスタディコーナーのカウンターに腰掛けても、景色を見ながら音楽を聴いてリラックスしてしまうのだそうだ。椎茸を収穫しながら、冬を迎える準備にと暖炉にくべる薪を雑木林から切り出す。 家庭菜園では、ミニトマトやゴーヤを収穫、これからもう少し畑を広げて野菜やハーブを増やしていくのが来年の楽しみだとも。
何が豊かなのか。一つの答えがここにある。

LDK
雑木の庭を通る玄関へのアプローチ

サイディング
バリアフリーを意識したフラットな玄関

「NICHIHA SIDING AWARD 2014」審査員評

雑木林の中の比較的広い敷地に建てられた別荘的な住宅である。南面中央に2層の吹抜を置き、その左右に諸室を配列することによって、左右対称形のコンパクトな住宅を実現している。 日射を制御する深い庇と側壁が、2階の左右に張り出したベランダと相俟って、郊外のヴィラのようなファサードを生み出している。 南面の大きな開口とテラスの開放的な表情と、東西面のちいさな窓を持つ壁的な表情が、外壁全面を覆う褐色の木目調サイディングによって統一されているのが印象的である。

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